旬の膳 弥生(しゅんのぜん やよい)

2011.11.24  渡邉達朗

みなさんは寒くなってきたら、どんなものが食べたくなりますか? いろんな温かい料理の名前が挙がると思いますが、「おでん」が食べたくなるって方も多いのではないでしょうか。本日お邪魔してきた「旬の膳 弥生(しゅんのぜん やよい)」は、お昼におでんと炊き込みご飯の御膳を提供しておられまして、これがもう素晴らしく美味しかったのでご紹介いたします。

この日は「牛肉とごぼうの炊き込みご飯」だったのですが、まずこれが本当にいいお味でして。あっという間に食べ終わり余韻に浸っていると、優しそうな女将さんが「おかわりはいかがですか?」と訊いてくださいます。嬉しくなって「おかわり」をいただいたところ、なんと炊き込みご飯が無くなってしまったようでした。限定15食なのに悪いことをしてしまったかも……。

いきなりご飯のことばかり書いてしまいましたが、シンプルに3品で構成される「おでん」も絶品です。ジューシーな大根を一口ほおばるたびに幸せな気分になりました。海苔の入ったお味噌汁も美味ですし、これだけ満足度の高いお昼をいただけて840円というのは奇跡的だと思います。

お店は毘沙門天の裏手、蕎麦の名店「蕎楽亭」のすぐ横にあるのですが、大人の隠れ家といった感じの落ち着いた店構えをしているため、知らないと素通りしてしまうかもしれません。「め乃惣」と同じく、泉鏡花の小説でモデルにもなった老舗料亭「うを徳」の分家と聞くと、なんだか納得してしまいます。

かといって、初めて訪れる者にとって居心地が悪いかというとそうではなく、真面目な店主と気の利く女将が心のこもったおもてなしをしてくださるので、とても気分よく食事を楽しむことができますよ。炊き込みご飯の内容は店主の気分でよく変わるそうですし、鯛めしがとっても美味しいそうなので、近々また訪れたいと思います。

<2016年3月26日追記>
大切な方を神楽坂へ招待することになり、どんなお店がいいかずいぶん迷ったのですが、落ち着いた雰囲気でリラックスしていただけるところが好いだろうと考え、ご主人や女将さんが温かく迎えてくださる「旬の膳 弥生」にお邪魔してきました。

神楽坂には泉鏡花の作品にも登場する「うを徳」という有名な料亭がありますが、「弥生」のご主人は「うを徳」の三男として生まれ育ち、京都で修業を重ねたのちこのお店を開かれました。芸能・出版関係者も足繁く通うという店内には、中村勘三郎さんなど人気歌舞伎役者の隈取が飾られています。

手書きのお献立を見てみると、あじフライや蟹クリームコロッケなど、伝統的な割烹を受け継ぐお店とは思えないメニューがあるのも楽しいです。きっと常連さんの要望にこたえるうちに定番になったのでしょうね。どのお料理も素晴らしい味わいで、熱燗を飲みつついただくスミイカやほうぼうのお造りは絶品でした。

お招きした方にも喜んでいただけて、楽しいひとときを過ごしていたのですが、途中お店の壁に柳原良平さん直筆のイラストが飾られていることに気づきます。女将さんに話を聴いてみると、そもそも「旬の膳 弥生」の題字を山口瞳さんが書かれていたことなどが分かり、いろんなお話をうかがうことができました。料理が美味しいとか、居心地がいいというだけでなく、こういう物語のあるお店はとても神楽坂らしくて素敵だなと思います。

店名:旬の膳 弥生(しゅんのぜん やよい)
ジャンル:懐石・会席料理
TEL:03-3267-0031
住所:東京都新宿区神楽坂3-6
営業時間:11:30~14:00、17:30~22:00
定休日:昼は要予約・日曜日はご予約のみ
席数:38席

旬の膳 弥生懐石・会席料理 / 牛込神楽坂駅飯田橋駅神楽坂駅
昼総合点★★★★★ 5.0

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